【卒業コラム その01】
農業を通じて得たかけがえのない友情
去年は「転機」という言葉そのものの、人生の一番大きな変化があった一年だった。
農業をするために移住を選んだからには、徹底的に農業を学ばなくてはいけない。
農業未経験者が農業を始める上でまず栽培知識を習得することが急務の課題であり、様々な方法がある中で僕が選んだのは、山梨県立農業大学校の職業訓練社会人コースだった。
社会人コースは9か月で、山梨県内の農業生産法人等への就職を目指し、農作物の栽培技術や農業経営に関する知識を習得する、実習ありきのコース。
https://www.pref.yamanashi.jp/noudai/shokugyoukunren.html
年々倍率が高くなっているが運良く面接に合格し学生に!(37歳で学生!!!何歳になっても一生勉強です)
県内の農業法人に就職することを目的とした職業訓練なのでゆっくりじっくりなんて言っていられない。
本来2年かけて学ぶカリキュラムを9ヶ月にギュッと詰めて猛スピードで駆け抜けるシステムで、そもそも農業をしたことのない僕が農家になるためのエッセンスを凝縮させて教えてくれるんだから、学ぶことが山ほどある。
農業に必要な基礎知識の習得となると多岐にわたる。
実習は農大にてトラクター、マルチャー、刈払機、管理機、運搬車など使いこなしながら野菜栽培、
週2日は農家に出向き一緒に畑仕事、
その合間に座学で肥料・農薬・病害虫・法律・獣害・流通・簿記・経営学の畳み掛け、
秋になると畑の野菜たちの声(肥料くれーとか喉乾いたとか虫来たよーとか暑いだの寒いだの)が落ち着き、
ホッとしたのも束の間、先進農家の視察がバンバン入り、
早朝4時台の市場の見学、
幕張の農業ワールドで圧倒され目を回し
そんなこんな、自分で作った野菜は自分で売りなはれと、販売実習(甲府駅周辺や小瀬の公園などで、野菜美味いよーさぁ買った買ったと喉枯れるやつ)が断続的にやって来る。
そして泣く子も黙るのが恐怖の訓練日誌。
今日やった作業を毎日の終わりに記録をつけるもの。なにが恐怖なんだ!なんだ簡単な事じゃんか!と、思うなかれ。
太陽を浴びながら汗だくになり、日中いじめた身体はもう、くったくたになる。そんな体に鞭打って震える手で書くこの作業は強靭な精神力を要する。(3週間分まとめて書くとかいかーん!授業中書くとかもいかーん)
そして農業生産法人の視察。
凄みに圧倒されること多々。いろいろ触れる中で、自分が歩む農業の形や、道が見えてきたし、迷いもするし。様々なスタイルがある事を知ると
またそれが僕の農業の基礎になっていくんだと思って影響受けまくり。
こうやって9か月を過ごした農大。
座学や実習で農業の基礎が身につく、それだけではないんですよね、農大は!
なによりもかけがえのない仲間との出会いが僕を成長させてくれたと思う。
出会う事が恐らく無かったであろう人たちが「農業」という接点で知りあった。泥だらけになり、汗を流し、野菜を作り、収穫する喜びを分かち合い、共に過ごす中でかけがえのない仲間になった。
それぞれが人生経験を重ね、僕の知らない世界を歩んできたおよそ50人の仲間。
彼らとコミュニケーションをとれば僕の知識と情報は50倍に膨れ上がる、農大の社会人コースの最大の特徴はこのネットワークだと確信できる。
仲間の年齢は20代から60代とバラバラ。男性4人に女性1人の割合。野菜コースと果樹コースに分かれ別々のカリキュラムをこなしていく。僕は野菜コースを選択した。
この写真は早朝自主的に集まって野菜づくりに勤しんでいるところ。
標高700メートルの北杜市にある農大の素晴らしい景色の中での作業。空気も澄んでいて夏は気持ちいい。
11月にもなると寒い。この頃には朝の野菜は凍るのが基本。
一年前にはこの仲間たちとここで農業を勉強しているとは全く想像出来なかった。僕のまた新しい農業という人生が動きだした。
それも仲間、同期がいる。それは、これからの人生のとても心強い支えになっていく。