甲府から登る山#2:八ヶ岳

日が長くなるのに合わせて、盆地の周りの山の雪も少しずつ、少しずつ減っていくこの季節。つい最近まで真っ白だった気がする富士山も、今はだいぶ雪が減りました。山に残る雪で季節を感じることができるのも、甲府ならではの味わいです。

そして全ての雪がなくなった頃、待ちに待った夏山シーズンがやってきます。

猫も夏ポーズに衣替え中。お腹が暑いんです、きっと

猫も夏ポーズに衣替え中。お腹が暑いんです、きっと

 

甲府から登れる山々をざっくりご紹介。今回はみんな大好き、八ヶ岳(やつがだけ)エリアです。

 

 

■八ヶ岳(やつがだけ)とは

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硫黄岳へ向かう稜線の途中、赤岩の頭付近から。背後に並ぶのは南八ヶ岳の山々

 

八ヶ岳は山梨県北杜市から長野県佐久市にまたがり南北に連なる山脈のことで、日本アルプスほどの険しさや山深さはありませんが、バラエティに富んだ山々や、豊潤な森林などでとても人気のあるエリアです。マイカー規制もなく、日帰り可能な山が多いのもいいところ。

山麓には清里や蓼科高原、白樺高原など著名な高原リゾートが数多くあり、観光地としても人気です。

 

山中の山小屋がどれも個性的でオシャレなのも特徴的。あくまで主観ですけど、東京の街に例えると、北アルプス=銀座、南アルプス=上野(か浅草)、八ヶ岳=吉祥寺、だと思ってます。八ヶ岳の雰囲気は吉祥寺っぽい!

揚げパンが名物の高見石小屋。メニューも外観も、オシャレでかわいい

揚げパンが名物の高見石小屋。メニューも外観も、オシャレでかわいい

 

ほぼ中間に位置する夏沢峠(なつざわとうげ)より北を北八ヶ岳、南を南八ヶ岳と区別することが多いです。

南八ヶ岳には主峰赤岳(あかだけ)をはじめとした険しい岩峰が連なり、スリリングな岩歩きが楽しめます。北八ヶ岳は南八ヶ岳より穏やかな山が多く、苔むした樹林帯のハイキングなど、豊かな自然を満喫できます。

 

甲府からだと、どこが起点かにもよりますが、一番近い小淵沢あたりまで車で高速を使えば30分強、下道で清里が1時間弱、一番遠い蓼科周辺が高速利用で1時間半ぐらい。横浜からはるばる来ていた頃に比べると、本当に近くて、気軽に登れる山になったのはありがたいです。

 

■赤岳(あかだけ)/ 2,899m

主峰にふさわしい、どっしりした貫禄の赤岳(権現岳より)

主峰にふさわしい、どっしりした貫禄の赤岳(権現岳より)

 

八ヶ岳最高峰の山。山梨県側から見ると、ほぼ中央にどっしりと三角形に見える山がそれ。最高峰にふさわしく、険しくも楽しい岩場の登りが魅力的。

2015年に山頂に猫が住み着いたことが話題になっていましたが、あんな険しい山にいったいどうやって登ったのでしょう…捨てられたのならひどい話ですね。(現在は無事保護されたようです)

 

長野県側の美濃戸から登るのが一般的で、赤岳~横岳~硫黄岳と周回するコースも人気です。

美濃戸からの文三郎尾根、地蔵尾根、美し森からの真教寺尾根、県界尾根、権現岳からのキレット越えと、登頂するルートはたくさんありますがどれも急な岩場となっており、特に真教寺尾根、県界尾根、キレット越えは中級者コースになるので初心者には不向きです。(この3つは八ヶ岳最難コースと言われています)

初回は、美濃戸からがオススメです。赤岳のみであれば健脚なら日帰りも可能ですが、山小屋もたくさんあるのでどこかで1泊すると余裕を持って登れると思います。赤岳鉱泉に泊まれば、夕食にはなんとステーキが!

 

■横岳(よこだけ)/ 2,829m

岩稜の絶壁が連なる横岳。通過は慎重に

岩稜の絶壁が連なる横岳。通過は慎重に

 

赤岳から連なる稜線にあるギザギザとした岩峰。いくつかのピーク(高いところ)をまとめて横岳と呼びます。北八ヶ岳にも横岳があり、そちらは区別するため北横岳と呼ばれることが多いです。

切れ落ちた絶壁や、鎖場(鎖を掴んで登り降りするような急なところ)があるため、南八ヶ岳の主稜線のなかでは一番スリリングな箇所。赤岳とセットで登ることが多いです。

 

■硫黄岳(いおうだけ)/ 2,760m

だだっ広い山頂にはケルンが並び、異様な雰囲気の硫黄岳

だだっ広い山頂にはケルンが並び、異様な雰囲気の硫黄岳

 

北側に爆裂火口と呼ばれる噴火口の跡が生々しく残る山。火口をよく見ようと、近づき過ぎると落ちちゃうので注意。広大な山頂にケルン(石を積んだ塔)が並ぶ様はあの世の入り口のようで独特の光景。横岳へ至る稜線は、高山植物の女王、コマクサの群生地として知られています。

 

■阿弥陀岳(あみだだけ)/ 2,805m

赤岳山頂から見た阿弥陀岳。険しさは赤岳に並ぶ

赤岳山頂から見た阿弥陀岳。険しさは赤岳に並ぶ

 

山梨県側から見ると、赤岳の左に似たような急峻な三角形でそびえる山。険しさは赤岳に匹敵し、冬期の難易度は赤岳以上とか。

実はなんとなく登りそびれていてまだ一度も登れていません…。今年こそ登っておきたい山。

 

■権現岳(ごんげんだけ)/ 2,715m

写真上部の岩山が権現岳の山頂。背ビレのように並ぶ岩がかっこいい

写真上部の岩山が権現岳の山頂。背ビレのように並ぶ岩がかっこいい

 

赤岳とキレット(山と山の間に深く切れ込んだ谷状の地形のこと)を挟んで小淵沢寄りに立つ山。小淵沢ICすぐの観音平(かんのんだいら)から登るルートが主流。日帰りで、編笠山とセットで登られることも多いです。

観音平方面から登ると、手前にギボシと呼ばれる岩峰が立ち塞がり、これを山頂と勘違いした人は私です。ギボシ前後は切れ落ちた岩場や鎖場となるので慎重に通過しましょう。

巨岩が積み重なる山頂と、その下の斜面にゴジラの背びれのように連なる岩の眺めが異様で、好きな山です。

 

■編笠山(あみがさやま)/ 2,524m

編笠のような形で編笠山。手前にある小屋は青年小屋

編笠のような形で編笠山。手前にある小屋は青年小屋

 

その名のとおり、編笠のような綺麗な円錐形をした山。山梨県側から見ると、一番左に山型の柔らかなアーチを描いている山です。

南八ヶ岳の中では一番易しいと言われていますが、山頂直下はなかなかの急な登りが待ち構えています。木の根に引っかかって盛大にすっ転んだ思い出の山。

 

権現岳方面、青年小屋へ降りる斜面は一面巨岩が転がるゴーロ帯となっており、アスレチックみたいで楽しいか、隙間に落ちそうで怖いかはかなり個人差が出そうです。

広い山頂からの眺めは、天気が良ければ小淵沢の街並みが一望でき、格別です。

 

■天狗岳(てんぐだけ)/ 2,646m

 

八ヶ岳のちょうど中央あたりに位置する双耳峰(ふたつの山頂が動物の耳のように並ぶ)の山。

日本最高所の露天風呂がある本沢温泉をはじめ、登山口の周囲には秘湯系の温泉が豊富。

南八ヶ岳の岩稜好きな自分には、ちょっと物足りない気がして実は一度も登っていません…こちらも今年こそ登る予定。

 

■北横岳(きたよこだけ)/ 2,480m

冬期、ロープウェイ山頂駅に広がる坪庭を見下ろす

冬期、ロープウェイ山頂駅に広がる坪庭を見下ろす

 

ピラタス蓼科スノーリゾートにある北八ヶ岳ロープウェイを使えば、比較的ラクに山頂に着ける山。特に冬、雪山入門の山として人気が高いです。

ロープウェイで上がったところにある坪庭(つぼにわ)散策だけでも、雲上のプチハイキングが楽しめます。

 

■蓼科山(たてしなやま)/ 2,531m

プリンにそっくりな冬の蓼科山(北横岳より)

プリンにそっくりな冬の蓼科山(北横岳より)

 

別名プリンちゃん。じゃなくて諏訪富士とも呼ばれる、円錐形の綺麗な山容が特徴の山で、八ヶ岳最北端に位置します。冠雪期に見ると山頂だけ白い様がまるでプリンなので、私の心の中ではプリンで定着しました。

プリンのとおり広大な山頂は、クレーターのような火口跡を岩が覆い、まるで他の惑星のようです。晴れていれば北は浅間山から南に連なる八ヶ岳連峰まで一望でき、眺望は抜群。

白樺高原国際スキー場のゴンドラリフトを利用すれば、7合目登山口から比較的短時間で登頂可能です。

 

■麦草峠(むぎくさとうげ)/ 2,120m

白駒池周辺の苔の原生林は圧倒的

白駒池周辺の苔の原生林は圧倒的

 

八ヶ岳を東西に横断して走る国道、メルヘン街道のほぼ最高地点にある峠。標高は日本の国道第二位。

冬季閉鎖期間以外は一般の車でも行くことができ、駐車場から徒歩15分のところにある白駒池(しらこまいけ)は観光スポットとして人気。白駒池周辺の苔の森は、日本三大原生林に数えられ、もののけ姫の世界のような重厚な森林に圧倒されます。

白駒池から少し足を延ばせば森林のハイキング、更に遠征してそこそこの登山と、観光以外にもいろいろな楽しみ方ができるお気に入りのスポット。

今年のGWの白駒池。標高が高いためまだ残雪があり、池は凍っていました

今年のGWの白駒池。標高が高いためまだ残雪があり、池は凍っていました

 

初心者から経験者まで満足できる豊富なルートと、たくさんの観光スポットで、誰といつ行っても楽しめるのが八ヶ岳の好きなところです。特に森林の豊かさは、個人的には上高地より見応えがあり、気に入っています。山麓のリゾートエリアだけでも充分満喫できますが、せっかく行くなら豊かな自然に一歩でも踏み込めば、より一層八ヶ岳の魅力を見つけることができると思います。

 

次回以降はまた、別の山々をご紹介できたらと思っています!