はじめましての自己紹介 ―移住の経緯

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コラムをご覧のみなさま、はじめまして。

来月2017年5月に、晴れて甲府に移住して一周年ということで、こちらのコラムを新しく担当させていただくことになった松下 藍と申します。

 

出身は東京都の田園地帯(注:褒め言葉です)町田市、移住前は横浜市で両親と一緒に暮らしていました。

フリーランスの映像屋で、自宅でPCを使いCGをつくったりする仕事を主にしています。

今回は初回なので、自分が移住した経緯についてご紹介します。

 

移住した目的、それはズバリ登山です。

他にも猫が仲悪いとか細かい理由は星の数ほどありますが、一番の理由は、趣味の登山のため山の近くに住みたかったから。家で仕事中、ふと横を向いたら窓の外から山が見えたら素敵だな、と思ったから。それも、なんだかよくわからない薄布のような山並みではなく、日本を代表する山々が壁のように見えるなら、どんなに素晴らしいことか。

 

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昨年2016年9月に登った、剱岳山頂より。アルペンルートも甲府からだと思ったより遠くない

 

登山者の聖地といえば、上高地。上高地といえば、長野県です。例に漏れず、私も当初は松本に住みたいなあなどと、漫画『岳』を片手に夢見ておりました。移住者第1段階、「夢見る少女タイム」です。

実際、松本には下見という口実で旅行にも行きました。ずいぶんオシャレな街だなあと思ったのを覚えています。

 

移住者第2段階、「現実を見始める」に突入すると、夢も一気に醒めてきます。

私は東京で週一で講師の仕事をしており、どうしてもそれは辞めたくありませんでした。東京まで通うのに、松本は遠すぎます。ならば、中間をとって山梨県ならどうだ。

 

当時、山登りをしていて一番よく通っていたのは長野県ではなく山梨県でした。

登山をすると様々な山麓の集落を通りますが、山梨県だけその雰囲気が、群を抜いて良いかんじなのです。どこがどう、と具体的に説明するのは難しいんですが、何か明るくて開放的なものを感じていました。登山口まで向かう風景も、子どもの頃に観ていたアニメ『にっぽん昔ばなし』を思い出すようで、心躍るものがありました。

 

ターゲットを山梨県に絞ったところで、どこに住むかです。ここで私はまた安直に、「八ヶ岳に近い」という理由で北杜市を狙いました。日本一の日照率を誇り、移住したい街のトップに君臨し続ける北杜市。ザ・田舎暮らしの代表のような北杜市。名前もなんだかかっこいい、北杜市。

 

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八ヶ岳・硫黄岳~横岳の稜線より。見るのも登るのも楽しい八ヶ岳

 

しかしここで移住者第3段階、「現実の壁にぶち当たる」が待ち構えていました。

独身女1人きり&猫なので、賃貸でマンションを借りるつもりでいました。が、物件が…ない。空家物件はたくさんあるのですが、1人で一軒家はハードルが高すぎるし、そもそも一軒家に今まで住んだことがありません。メンテナンスとか考えても、絶対、無理。

 

そもそも冷静に考えてみましょう。今まで徒歩圏にコンビニ・スーパー・ドラッグストアがあるのが普通で、休日にはショッピングして飲みに行き、ときどきTSUTAYAでDVDを借りて、本屋で本を買う。そんな生活をウン十年続けていたのに、いきなり畑と森と山しかない田舎に住んだら、カルチャーショック過ぎて入院して、鹿とお話する人になってしまうかもしれません。病院も近くにないかもしれないのに。

 

田舎暮らしと聞くといいイメージばかりが先行していますが、本当の田舎に暮らすのならば、もっとリアルに考える必要があると思います。

 

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こんな風景、見ているぶんにはときめきます

 

田舎に暮らすことが目的ではなく、単に山の近くに住みたかった私は、北杜市をあっさり却下しました。

 

そして浮上したのが甲府市です。

甲府には、一度だけ、登山のためビジネスホテルに前泊したことがありました。しかしそのときは夜遅く着いて即ホテルで寝て、翌朝始発で登山口に向かい、その翌日の夜ボロボロでバスで戻ってきてまっすぐ帰るという状態で、ほとんど素通りでした。

唯一、出発する朝、甲府の駅前から見えた山並みが朝日で赤く染まるさまがとても美しく、こんな街に住んだら幸せだろうなあ、と思ったのが印象的でした。本当にその翌年、住んでしまうとはそのときは思ってもいませんでしたが。

 

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その朝、甲府駅前から見たモルゲンロート(山の朝焼け)

 

ネットで甲府市内の賃貸物件を検索したら、北杜市とは比べ物にならない数がヒットして歓喜し、片っ端から眺めていました。移住者第4段階「物件情報をオカズに妄想しニヤける」です。

しかし土地勘が一切ないので、どこの地域がどういう雰囲気でどう違うのか、さっぱりわかりません。

 

その頃、このコラムのあるサイト「甲府の暮らし方」もよく覗いていて、その繋がりで東京・有楽町にある移住支援センターの存在を知りました。定期的に甲府の担当の方が来ていると知り、さっそく向かいました。

 

現地でお会いした甲府市移住コンシェルジュの成澤さんはとてもパワフルでフレンドリー。その話しやすさと何でも知っている情報量で、気がついたら2時間以上も話していました。

「甲斐駒ケ岳が見える家がいい」「見晴らしのいい家がいい」などのちょっと特殊な要望にもすらすら応え、オススメの地域から富士山に向かうベストルート、おいしいお店まで教えてもらい、更に成澤さんの実家である旅館「萬集閣」の宿泊予約までさせてもらって、その日のうちにトントン拍子で下見に行くことまで決まってしまいました。

家でネットで100情報を集めたとしても、1人の人に会うことのほうが格段に大きいのだとつくづく感じます。

 

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下見の日は信玄公祭りで甲府駅前はとても賑わっていました

 

下見は2泊で、それぞれ1日1社ずつ3社の不動産会社に内覧の予約をしていきました。

1日目の不動産会社は地元の会社で、そこで2軒目に紹介してもらった物件に一目惚れし、ほぼ即決。

盆地の端の少し高台にあるそのマンションは、リビングからは甲府の街並みと富士山が一望でき、仕事部屋と寝室からは南アルプスが見える3DK。もちろんペット可、駐車場つき。これで家賃は5万円。東京だったら1Rにも住めません。理想以上の部屋に出会えた感動で、倒れそうでした。

 

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自宅から見える富士山

 

部屋と入居日が決まればあとは早く、引っ越しの準備をしたり契約しにもう一度甲府に来たり。有楽町の支援センターに行ってから、たった2ヶ月後には甲府に住んでいました。移住者最終段階「移住する」です。

 

第1段階から第4段階までは、誰でもできるしいくらでも時間をかけられます。しかし一歩踏み出したあと、現実になるまでは本当に早かった。

山の見える広い部屋で、仕事をして猫と遊んで山に登りに行き、温泉に入り、美味しい空気と水と野菜と果物を食べて、スーパーもコンビニもドラッグストアもTSUTAYAもあるし病院もたくさんある。こんな生活を満喫しているなんて、数年前までは思ってもいませんでした。

 

まだまだ甲府生活一年生ですが、こんな私が登った山や入った温泉、甲府に暮らして感じたことを気ままに、このコラムで紹介していければと思っています。

これからもよろしくお願いします!