コラム初回
初めまして。冷たい風の吹く冬、大きくなってきたお腹を抱えて甲府に引っ越してきてから1年ちょっとが過ぎました。当時、既に2年以上甲府で一人暮らしをしていた夫はこの日を楽しみにしていてくれたらしく、部屋がとても綺麗になっていたことを今でも覚えています。その後無事に出産をし、現在は、夫と、もうすぐ9か月になる息子と3人で甲府で暮らしています。
山梨県出身でもなく、山梨に縁もゆかりもなかった私たち。ですから、甲府には夫以外に身寄りはなく、残念ながら友達もいなく、知り合いもいない。そんな状況で甲府での暮らしは始まりました。そんな甲府での暮らし、こどもとの暮らしを、気ままにお届けしたいと思います。どうぞよろしくお願いします!
さて、「甲府」と聞いてもパッと思い浮かべるものがお世辞にも何もなかった私にとって、「甲府」=映画『サウダーヂ』(2011年、富田克也監督)でしかありませんでした。『サウダーヂ』は甲府出身の富田監督による、甲府が舞台の映画。出てくるのは、空洞化した中心街、シャッター街、ブラジル人労働者、鬱屈としたダサい若者たち、タイから出稼ぎに来ている可愛いミャオ(とっても可愛い)。ミャオに惹きこまれていく男。外の世界を知らない井の中の蛙同様の価値観で生きる地元の女達。甲府であって甲府ではないどこかでもある『サウダーヂ』の映し出す甲府は、生々しくリアルな地方都市の現実を描いているとはいえ、さすがにフィクションだもの、とどこかでそうではないだろうと思っていました。
映画の公開当時、ちょうど当時付き合っていた現在の夫の就職が山梨の甲府に決まり、東京に住んでいた私は「甲府?へー。」とどうしても甲府に興味の持てない遠い思いを抱えていたのですが、『サウダーヂ』という映画が面白いらしい、しかも舞台は甲府らしい、と聞きつけ、ユーロスペースに観に行きました。
「ほう、甲府、やばいね。こんな虚しい街に引っ越すのか。でも映画はめちゃめちゃ良かったなぁ。」という具合で、結局甲府への距離感もイメージも湧かないまま、時は過ぎました。
その後、何度か甲府に足を運んで、街を歩いていても、困ったことに頭の中には『サウダーヂ』の劇中曲が流れるほど荒んだ気持ちになる。家に帰り、彼にこの街の何もなさを叫ぶほど映画とシンクロして、甲府で暮らすのは精神的に毒なんじゃないかと思ったくらいでした。
その後、めでたく結婚したものの、なんとなーく甲府に引っ越すのがやだなぁと一緒に住むのを先延ばし先延ばしにしていました(もちろん仕事の都合もあったのですが)。そんなこんなで入籍してから約1年半以上、別居生活を続けていたのですが、そんなのではいけないと神様が怒ったのか、授かりものがあり、慌てて甲府に引っ越してきたのでした。それが1年前のこと。
当時、妊娠6か月ちょっと。仕事の引き継ぎと引っ越しの荷造りに加えて、これまた先延ばしにしていた結婚式の準備などバタバタとやって、忙しいものでした。
何もないと思っていた甲府へのイメージが変わったのは、住んでしばらくしてからでした。
それはまたおいおいゆっくり綴っていこうと思います!
引っ越した数日後に食べた山梨県産のルレクチェ。みずみずしくて甘くてこれまでに食べた洋梨の中でいちばん美味しかった!