内と外

例年より一段と寒い日々が続く今年の冬。

こんな寒い日は熱々の風呂に入るのが一番好きな時間。

とは言え、こどもたちと入るので熱々にできないのが悲しいのですが、

「風呂はいいねぇ、あったかいねぇ」といつも息子たちに言ってしまいます。

 

甲府市中心街にある元銭湯 竹の湯での展覧会「Flowing out」(会期:2017年9月30日、10月1日)には、2日間で315人もの来場者がありました。

 

(展覧会については、「山梨のいまを伝えるウェブマガジンMUJINKAI」、神田裕子さんによる記事『アートで溢れた元銭湯での2日間』をぜひご一読ください。)

 

山梨日日新聞の五味記者の記事を見て来てくださった方、前日のローカルテレビ「てててTV」の生中継をみて来てくださった方、SNSでの投稿をみて来てくださった方、

 

そのほかにも私が携わっていた甲府市リノベーションまちづくり委員会のシンポジウムでの告知で知った方、そして竹の湯のある自治会の自治会長さんが私たちの活動を周知させるべく紹介記事を回覧で回してくださったりしたおかげで、アートには興味がない方も含めて老若男女、いろんな方面の方が足を運んでくれました。

 

そう、ちょうど展覧会最終日に、甲府駅を挟んで反対側にある高砂湯が90年の歴史に幕を閉じることもあり、高砂湯と併せて県外からいらっしゃる銭湯フリークの方もいらっしゃいました。

 

小さい頃に竹の湯に通っていたという方も。

 

山梨日日新聞2017年10月7日付「風林火山」。
ちょうど展覧会の最終日に、90年以上の歴史に幕を下ろした高砂湯。
展覧会が終わってから出展作家さんたちとタクシーに飛び乗り、高砂湯へ最後のお湯を浴びに行きました。
社説「風林火山」ではこの高砂湯の閉湯、そして私たちの展覧会にも触れてくださると同時に、私たちが問いかけたかったことを言葉にしてくれていました。

 

たくさんの人がひっきりなしに溢れかえる会場では、ここに来なければ交わることのないたくさんの人と人が繋がっていく様子を目にしました。きっと竹の湯がまだ銭湯だった頃、こんな風に普段の生活では決して交わらないであろう人々が出入りしていたんだろうなと思うと、過去と現在がオーバーラップするような不思議な感覚になりました。

 

そして、作品だけではない、場所が持つ力を感じながら、一歩動き出せたことを嬉しく思いました。

 

展覧会の設営中、出展作家たちとともに。
撮影:砺波周平

 

展覧会も子育ても自分ひとりじゃできなくて、たくさんの人が手助けしてくれること、それだけじゃなくて応援してもらえることがどれだけ励みになるか、身に沁みて感じました。改めて感謝するばかりです。

 

昔はなんでも自分ひとりでしなければ、できなければいけないと思っていました。

 

でも、こどもが産まれてこれまでの10分の1、いや100分の1くらいの仕事量しかこなせなくなって、なんでも自分でやろうと思わなくなり、うまい具合に手も抜けるようになりました。

 

不思議なのが、自分ひとりでキリキリしながらこなしていた頃より、今のやり方のほうがずっとうまく進むということ。

 

この冬で山梨に引っ越してきてちょうど3年。

 

3年前の今日、寒い中ドタバタと身内だけの結婚式を終えて、大きく膨らんできたお腹で車にたくさんの荷物を積み込んで甲府にやってきました。

 

あの時と同じ、冷たく澄んだ空気と雪をかぶった山々。

 

この3年で、夫婦ふたりから家族4人になっていろいろあったものでした。

 

この街で暮らして「内」の人になるのがとても怖かった。けれど、そろそろ私も内の人になりかけているような気がします。

 

竹の湯での展覧会は「外」の人だからできた展覧会でもありました。

 

いつまでも外の目線を忘れずに、内の心地よさや温もりも感じながら楽しく生きていたいです。

 

外はとっても寒い風が吹きすさんでいるけれど、歩いて街に出るといつも誰かに出会えて、あったかい気持ちになれます。あったかい気持ちで帰路を歩いていると、いつも向こうには連なる山々がこっちを見ているんです。それでまたあったかい気持ちになるんです。

 

毎日外に出歩いているからか、子供たちも風邪一つひきません。

今年も心身ともに健やかでいられるよう、たくさん歩いてたくさん喋ってたくさん美味しいもの美しいものに触れていきたいと思います。

 

遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

『Flowing out』でキュレーションしたアーティストぬQさんが郵便局とコラボレーションしてデザインした年賀状フレーム。写真は山梨の子育て応援誌『ちびっこぷれす』編集長 加々美吉憲さん。甲府市中心街にあるHitotzukiの《KOFU MURAL》(2016年)の前にて。