就農体験ホームステイ開催レポート「第二回②」
就農体験ホームステイとは、就農を考えている移住希望者が、甲府市内の農家さん宅にお世話になり、農家さんと親睦を深め、地域の繋がりを作ることで、甲府の就農をより具体的にイメージしてもらう体験ツアー。
参加者とホームステイ前に会い、就農や移住に対する思いを聞き、その思いを事前に農家さんに伝え、その上でホームステイを開催しました。
以下は1泊2日の就農体験ホームステイで記録係が撮影した写真をベースに、それぞれ思いの違う3組を追いかけた就農体験ホームステイ開催レポートです。
就農体験ホームステイ 第二回「単身で良地を探す。②」
二組目は茨城からお越しの村田さん(仮名)。現在、農業専門学校に通っています。
来年から本格的に農業を開始するため、自分にあった土地を探して今回のホームステイに参加されました。
「何か作物は決まっているんですか?」という質問に、村田さんは「ネギを作る予定です。」と答え、「なぜネギなんですか?」と重ねて質問すると「ネギは1年中収穫でき、あまり土地を選ばないので、初心者でも安定して始められる。」と答えました。とても誠実に農業を考えていらっしゃるんだなという印象を受けました。
今回、村田さんを受け入れるホームステイ先の農家さんは千野さんです。
千野さんは、昔から甲府で農業を営んでおり、またご先祖さまは代々学校の先生であることから、農家の育成に力を入れており、千野さんの家から沢山の農家さんが生まれました。
第一回でご紹介した菅沼さんも千野さんから農業を教わった農家さんの一人で、未だに千野さんのお手伝いをしています。
誠実に農家になりたい村田さんと、誠実に農家を育ててきた千野さん。
少し言葉数が少ないお二人の言葉が無くてもお互いが何かを感じる1泊2日のホームステイレポート2回目です。
ホームステイ2日目
少し肌寒い2日目の朝は、奥さんが作ってくれた温かい朝食を頂きます。
ホームステイに参加する際、村田さんは「日が昇ると共に起き、日が沈んだら眠る。そんな昔は当たり前だった暮らしの方が、実はとても人間らしいのではないかと思う。土と共に生きる。そんな生き方をしたい」
と言っていました。農業は村田さんにとって人間らしさそのものなのだと思います。
朝食を取りながら、奥さんが村田さんの専門学校生活を聞きます。
「そっちは寒いのか?」「こっちの方が夏は暑いね」それは実家に帰ってきた息子を心配するように。
ここは甲府市内にある直売所。昨日収穫したかぼちゃをここで販売します。
「ここに出すものは全部、甲府の農家が作ったもの。だから自分だけが売れればいいわけじゃない。全体のバランスが大切なのよ」と奥さんは話します。
直売所への出荷が終わると、次は果樹の剪定作業です。
ここで菅沼さんがお手伝いに参加します。
甲府の先輩農家の菅沼さんが村田さんに果樹の剪定を指南します。
実学によって、こうして甲府の農業は新しい世代へと継承されていきます。
「今も昔も甲府の新規就農者がなかなか増えないのは住宅の問題が大きい」と千野さんは話します。
行政が「空き家バンク」などを設けているけれど、持ち主がなかなか家を出してくれないという現状を話しました。
「この辺の農家だっていつまでも若いわけじゃないし、いつまでも同じようには働けない。
その危機感を農家ももっと感じて歩み寄らないと、本当に甲府の農家は無くなってしまう」
「毎年100人じゃなくていいから、年に1人でいいから、甲府の農家のことをちゃんと知ってくれる機会をもらえれば、私たちがちゃんと面倒見ますから。菅沼君みたいに若い人が10年後10人増えていれば、それが素晴らしいこと」
と、千野さんは強くお話されました。
一通りの剪定作業が終わると、みんなで一斉に片づけを開始します。
男手が多いと、片づけはとても早く終わります。
村田さんが甲府の農家になるかどうかはこれからですが、ホームステイを通じて何かの縁が生まれれば良いなと思っています。
最後は千野さんの息子さんもいらっしゃったので、菅沼さんも含めてみんなでお昼ご飯を食べました。
奥さんの美味しいご飯に心も体もとっても癒されたようです。
こうして第二回の就農体験ホームステイは終了しました。
実直に農業を営む千野さん、情熱的に後継者を強く思う奥さん。二人のやさしさに包まれて、本当にいい時間を過ごさせて頂きました。
今後、村田さんは甲府も視野に入れて、自分の条件に合った土地を引き続き探し、見つかればすぐにでも農業を開始されるとのこと。
村田さんが甲府を選ぶかどうかは分かりません。
自然の流れの中で彼が甲府を選んでくれたならば、新しい仲間として、甲府の農家さんはみんな笑顔で迎え入れてくれるのかな、そんな風に感じました。