就農体験ホームステイ2017開催レポート
【第三回】
就農体験ホームステイとは、農業に興味のある移住希望者が、甲府市内の農家さん宅にお世話になり、就農体験を通じて農家さんと親睦を深め、地域との繋がりを作ることで、甲府への移住・定住のイメージを具体的にもってもらうことを目的とした体験ツアーです。
昨年に初開催し、実際の移住者も輩出して好評だった本企画は今年も開催され、農業に興味があり参加した3組の移住希望者のホームステイ内容をレポートとして公開します。
就農体験ホームステイ2017開催レポート第三回「東京ではない出会いを求めて」
三組目は近い将来に独立を視野に入れて都内の企業で働く小島さん(仮名)。小島さんは某大手インターネットサービスで働いていた経歴を持ち、当時の仕事は地方への出張も多く、地域との関わりも多かったそうです。また趣味が旅行で、交通手段を特に決めずに旅をすることもあり、甲府へは東京から長野へ徒歩による旅行を敢行した際に寄ったことがあるそうです。
そんな小島さんは知人の紹介で菅沼さんを知る機会があり、知人からいま菅沼さんが甲府市内で行っている取り組みを聞いたことで興味を持ち、学生が農業に触れ合う機会を増やすために行っている農業体験や、農業未経験で地域に地縁のない新規就農者の独立支援など、個人で活動する菅沼さんに自分も何か携わることが出来ないかと考え今回のホームステイに参加されました。
小島さんの就農体験ホームステイは今までのホームステイと少し違い、色々と話し合った結果、小島さん本人の希望で、菅沼さんが東京の人が甲府に来やすくなるための拠点整備として、東京の仲間と進めている「農家の空き家リノベーション企画」に参加することになりました。
農業というキーワードで東京から集まった菅沼さんの仲間たちに交じって、農業に関わりたい人たちを支援する菅沼さんの志に共感した小島さんが、農家の空き家リノベーションに参加することで、今後甲府とどう関わっていくのか。1泊2日の就農体験ホームステイをご覧ください。
ホームステイ1日目
寒さも厳しくなってきた1月の早朝。JR甲府駅に到着した小島さんを菅沼さんが迎えます。
既に面識のある2人は久々の再開に笑顔をこぼしつつ、朝日眩しい甲府駅から車で中道地区に向かいます。
甲府市は縦に長く、甲府駅から菅沼さんの住む中道地区までは平和通りを南下して中央自動車道甲府南ICを目指し20分程度車で走ります。
車の中で改めてお互いに自己紹介を2人。ホームステイの趣旨を聞きながら今回のリノベーションについて質問する小島さんに、一つずつ丁寧に答える菅沼さん。お二人とも快活に話されるので、傍から聞いていると何かの討論会のよう。でも話している内容は笑いありのほっこりした感じ。とても不思議な空気間で進みます。
小島さんは営業職に近かったこともあり、話がとても上手で、菅沼さんのリラックスして話している姿を見ると、どちらがホームステイ参加者かわからなくなります。
早速、リノベーションを開始します。
先ずは住んでいた農家さんの家の物を全て外に出す作業。歴史を感じる沢山の品物が外に出されていき、庭先は早々に荷物の山になりました。
大体1日に活動できる時間は5時間程度。前半の3時間で大よそ片づけは終わり、午後は室内の掃除となりました。
今回のリノベーションに集まったのは、菅沼さんの活動に共感して甲府の農業に関わりたい人や、菅沼さんと一緒にビジネスをしたい人など、思いの違う人たちですが「何かをしたい」という共通の志によって強い結びつきを持っています。
参加者は大手インターネットサービス企業の方、大学生、ベンチャー企業の従業員と様々で、今回参加したベンチャー企業の従業員は甲府市の別企画に参加した結果、甲府に支店を出すことを決めており、その企画とは関係なく今回のリノベーションに参加しています。
また、就農体験ホームステイ第二回の参加者である東海さん(仮名)も今回のリノベーションに参加しており、甲府に関わった人たちが仲間となって甲府で活動を開始しています。
これも移住者であり、就農者でもある菅沼さんの志に共感しているからこそだと思います。
お昼はみんなで中央高速道路の境川SAで食事をとります。実は境川SAは意外と美味しいと評判で、平日のお昼時には満席になるほど人気があります。
いつか車で甲府に来る際は境川SAでお食事もご検討ください。
ご飯も食べて休憩したので午後の作業はゆっくりめに。
午後になればみんな打ち解けて、すっかり仲良しに。年齢も職業も違う人たちが菅沼さんを中心に集まって、新しい事業に向けて進んでいきます。
この後、リノベーションは早々に終わり、みんなで温泉へ。そして夜は甲府市の中心市街地で酒盛りをするのでした。
就農することが農業ではない。移住することが地域の理想ではない。大切なのはその土地にずっと関わり続ける事。
仲間を集めて旅に出る。
甲府の移住や就農に関わる人が多くなれば、甲府への交流人口が増え、自ずと移住者や就農者は増えるはず。すぐに結果が出るものでなし。回り道だとしてもそれが最短距離かもしれません。
ホームステイ2日目
昨日の喧騒とは打って変わって、早朝の静寂の中、菅沼さんが小島さんを自分の畑に連れていきます。
他の参加者はそれぞれ東京へ帰り、就農体験ホームステイで残った小島さんだけが菅沼さんの家に泊まりました。
小島さんの希望で、菅沼さんの畑を見学することに。
「昨日とは違って静かですね」と畑を見渡しながら小島さんが言うと「この静けさが本来の甲府だし、僕の生活ですよ。昨日みたいに集まる方が少ないです。」と笑いながら話す菅沼さん。
それに対して小島さんが続けます。「菅沼さんにとって農業って何ですか?こうしてリノベーションして、例えば新規就農者の独立支援をすることの意図は何かあるんですか?」
うーんと少し悩んで菅沼さんが答えます。「そもそも農大に通っていたし、こうして甲府に移住して農業始めてるので基本は農家だと思います。ただ自分が農家になろうと思ったのは3年前の大雪で甲府が孤立化した時に参加した除雪ボランティアがきっかけで、その時に見えていた課題に対する漠然とした思いから始まったので、100%農業をやりたくてここにいるわけではないです。ただ言えることは、あの時に学生なりに集めた仲間が今も色んな所で活躍していて、それぞれ今もつながっている。こうしたつながりを甲府に集中させることで、自分一人でできなかった課題解決が出来るようになるのではないかと。今はまだ儲けるとか、稼ぐとか全く考えられないし、それは色んな人に凄く、凄く怒られるんですけど。じゃあお金だけ考えるんだったら東京で十分だと思うし、こうして何かを感じて来てくれる人がいて、その結果お金ではない未来の何かを感じてもらえる。だから農業を通じて色んな課題を知って欲しいし、その課題に立ち向かえる仲間が欲しいですね。」と熱く語る菅沼さんに「とはいえ、生活もあるんだし菅沼さんはもっと稼がないと。」と心配そうに小島さんが言うと「それ、毎度本当に実家に帰ると親に言われてます。」と苦笑いで菅沼さんが答えました。
その後、少し菅沼さんの農業を手伝って、小島さんを甲府駅まで送り、今回のホームステイが終了しました。
小島さんはその後も継続して菅沼さんのリノベーションに参加しており、そこで知り合った仲間と仕事の話をしたりと、ネットワークが構築されています。
移住就農は最終ゴールではありません。移住就農はスタートラインです。そのスタートを踏み出すには多くの準備が必要です。当然、スタートするまでわからない課題もあれば、スタートしてからわかる課題もあります。それをどうやって解決できるのか。一人では難しかった時に仲間がいれば解決できる。地域に知り合いがいれば解決できる。そう思うことが多いです。
移住だけなら、就農だけなら、それこそ勢いで進んでしまった方が良いことの方が多いかもしれません。でもその土地を人生の住みかと選び、定住して農家になり、次の世代に託すのなら、その人に合った正しいプロセスを歩むべきと思います。
もし判断に悩んだら相談できる仲間がいる。
就農体験ホームステイは今後も参加者がいつか甲府に移住定住し、就農して農家になるために、出来る限りのサポートを行っていきます。