就農体験ホームステイ2017開催レポート
【第一回】

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就農体験ホームステイとは、農業に興味のある移住希望者が、甲府市内の農家さん宅にお世話になり、就農体験を通じて農家さんと親睦を深め、地域との繋がりを作ることで、甲府への移住・定住のイメージを具体的にもってもらうことを目的とした体験ツアーです。

 

昨年に初開催し、実際の移住者も輩出して好評だった本企画は今年も開催され、農業に興味があり参加した3組の移住希望者のホームステイ内容をレポートとして公開します。

 

就農体験ホームステイ2017開催レポート第一回「移住をつなぐ甲府」

 

一組目は、現在、東京都内にお住まいで、お子さんの進学を機会に移住を考えている大木さん親子。ご自身がアロマやオーガニックに関する事業を経営している立場から、お子さんを都会ではなく自然の中で自由に育てたいと考え、山梨県を仕事の拠点としながら、お子さんを学校に通わせるため、甲府市内での移住を考えて今回のツアーに参加しました。

 

そして今回そんな大木さん親子を受け入れて頂いたのは市川さんご夫婦。なんとお二人は昨年に開催した就農体験ホームステイの参加者で、本企画がきっかけとなって甲府に移住することを決めました。移住できるまでには苦難の道のりがありましたが、今は農業大学校も卒業して、新規就農者として着実に準備を進めています。

 

甲府市への移住者として、最近ではラジオに出演したり、甲府市のSNSに登場したり、本サイトでもコラムを執筆するなど、移住者として市川さんは農業以外でも活躍されています。その市川さんも、前回のホームステイにて先駆就農者である菅沼さんと知り合ったことで、甲府の農業、そして甲府市への移住をしっかりイメージできたと語っていました。

 

甲府への移住を考えている大木さんが、甲府の移住者となった市川さんと知り合ったことで、大木さんにどんな変化が訪れるのか。そして出会いの先に何が待っているのか。1泊2日の就農体験ホームステイレポートをご覧ください。

 

ホームステイ1日目

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市川さんを訪ねて甲府市中道地区に初めてやって来た大木さん親子。市川さんが息子さんを幼稚園から迎えに行くということで、先ずは市川さんが甲府の農業や生活でお世話になっている五味さんの家にご挨拶に伺いました。

 

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五味さんは昨年の就農体験ホームステイでも参加者を受け入れして頂いた農家さんで、日本に限らず海外からも五味さんを求めて人が集まるとても魅力的なご家族です。

 

この日もポートアイランドと神戸と千葉から五味さんのお知り合いが訪れ、ポートランドから来た彼女も自然栽培の農業を営むなど、オーガニックについて多くの知見を持っており、大木さんと彼女は英語と日本語を交えながらお互いの仕事について話し合っていました。

 

市川さんが合流した後は、みんなで温泉施設に向かったのですが、そこで温泉施設内の決まりなどをポートランドの彼女に英語で説明する市川さんの姿が。実は市川さん前職が貿易関係の仕事に就いており、外国の方とのコミュニケーションが得意の様で、市川さんの意外な一面を垣間見た瞬間でした。

 

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温泉から戻った大木さんは、五味さん一行と別れて市川さんの移住先となるご自宅に伺い、改めてホームステイでお世話になるご挨拶しました。

 

「昔の家だから勝手が違うかもしれないけど、ゆっくり過ごしてくださいね。」と市川さんが言うと、大木さんの娘さんと市川さんの息子さんは意気投合して部屋中を走り回る。

 

自由を与えられた子供たちを制御できる大人はいない!

 

疲れ知らずに延々と家の中を走り回っている子供たちを見て市川さんは「実は移住を考えた一つに、子供の成長を騒音だと思われてしまう環境があって、凄くストレスを感じていた。」「今は子供が大声で叫ぼうが気にしないし、子供が自由に遊べる環境を作れてありがたい。」と話し「うちでも周りの意見が疎ましく感じることはある。」「こうやって気にせず育てられるのは羨ましい。」と大木さんは答えていました。

 

そんなこんなで、子供も大人もすっかり馴染んだ頃、市川さんの奥さんが作った食事がテーブル一面に並び、夕飯を頂くこと。元々ご兄妹で飲食店を経営していた市川さんの奥さんは甲府中道で獲れた野菜を使って、色々な料理を出してくれました。

 

「甲府に来て色々と試すようになったんですよ。東京ではできない料理とか。実験?みたいな新しい試みができるのは楽しい。」と話す奥さんは最後に「失敗もするけどね。」と笑顔で答えていました。

 

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夜も深くなり、子供たちも疲れ果てて寝てしまった後は大人の時間。昨年の就農体験ホームステイを機会に移住した市川さんと、子供の進学を機会に本年の就農体験ホームステイに参加した大木さん。ホームステイという取り組みにより、出会うはずのない二人が子供の将来、甲府での生活、そしていつかの未来の話と、時には真剣に、時には笑いながら他愛もない、本当に友達のような他愛のない会話を繰り広げていきます。

 

年齢も境遇も近い2つの家族がホームステイをきっかけにつながっていきます。

 

 

ホームステイ2日目

 

朝起きた大木さん親子は市川さんがお世話になっている方の畑の手伝いをしに行き、奥さんがお子さんを保育園に送りに行くということで、農作業のお手伝いをする昨日お世話になった五味さんの家に行くことになりました。

 

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五味さんの家の本日の農作業は干し柿作りと収穫した野菜の袋詰め。収穫した渋柿の皮をきれいに剥いて等間隔に紐に取り付けたら、ぐつぐつ沸騰する鍋の中に丁寧に入れては家の軒下にぶら下げていきます。

 

知ってびっくりしたのは、この干し柿、表面にきれいな糖分の結晶が付いた高級品になると1つぶ300円の高値で売られることもあるそうで、そんなことを知ってか知らずか、大木さんのお子さんは積極的に干し柿を作っていきます。

 

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干し柿がひと段落したら、次は野菜の袋詰め。

 

ここで保育園にお子さんを預けてきた市川さんの奥さんが参入して一緒に野菜の袋詰めを行います。二人とも真剣に野菜を詰めていきます。

 

これが収入の一部になると考えると、主婦の血が騒ぐのかもしれません。

 

先ほどまで干し柿作りを手伝っていた大木さんのお子さんは、五味さんが買っている犬と一緒に遊んで、お母さんの気持ちなんてどこかの空に浮かべていました。

 

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そんな午前中の作業がひと段落したころ、五味さんのお母さんが作ってくれたお昼ご飯をみんなで頂くことになり、食卓に料理が並ぶと市川さんも知り合いの畑から一時的に戻ってきて、五味さんの家で一緒にお昼を食べます。

 

「五味さんのご家族のご厚意に甘えながらも、凄くありがたいと思っている。」「この地域に縁のない僕たちが家を見つけて住めるようになったのは五味さんのおかげです。」と市川さんはしみじみと語ります。

 

市川さんは下の名前が哲平というのですが、お母さんにいつも「哲平!哲平!」と呼ばれて、五味さんの息子が一人増えたみたいです。

 

血のつながりだけが家族じゃない。五味さんの家はそう思わせる温かい家です。

 

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午後になるとホームステイも終わりを迎え、帰りたがらないお子さんをなだめながら大木さんは車に乗り込み、市川さんの家を後にしました。

 

後日、市川さんに大木さんのことを聞いたら「こうして知り合ったのも何かの縁だと思っています。自分も移住者として、新規就農者として、まだまだこれからだけど、大木さんの何かの役には立ちたいと思う。」そういう風におっしゃっていました。

 

また大木さんは「市川さんの生活を少しだけ一緒にさせて頂いて、地域で生活することの良さや大変さをほんの少しだけ知ることが出来ました。」「移住するかどうかは別として、甲府の人たちに係わっていきたいと思います。」と答えました。

 

現に大木さん親子はその後、五味さんの家の年末餅つき大会や別の地域イベントなどで定期的に甲府に来ており、甲府で農業に関する新しいビジネスを始めたいと考えているようです。

 

こうして甲府に係わる人が一人でも多く増えていくことを願っています。

 

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