就農体験ホームステイ開催レポート「第一回②」

 

就農体験ホームステイとは、就農を考えている移住希望者が、甲府市内の農家さん宅にお世話になり、農家さんと親睦を深め、地域と繋がりを作ることで、甲府への移住や就農をより具体的にイメージしてもらう体験ツアー。

 

就農体験ホームステイ 第一回「家族で就農を考える。②」

 

1組目の神奈川県に住む市川さんご家族は、お子さまの成長をきっかけに、農大出身の旦那さんが、家族のより良い環境を考えるようになり、奥さんの支えもあって山梨での就農を決意し、甲府の新規就農について詳しく知るために就農体験ホームステイに参加されました。

 

市川さんを受け入れるホームステイ先は農家の菅沼さんも農大出身で、2014年の大雪の際にボランティア参加したことがきっかけで甲府と繋がり、甲府の農業に魅力を感じて、大学卒業後に単身移住、1年の農業研修を経て甲府に就農しました。
現在は学生を招いて農業体験を行ったり、都市部のイベントに参加して就農をPRするなど、農業継承者「農継者」の発掘育成に尽力し、協議会を発足して地域の協力を得るなど、甲府の就農者の若きエースとして活躍しています。

 

前回に引き続き、市川さんの就農体験ホームステイ開催レポート。
写真から垣間見える知り合った2人の距離が縮まっていく様子をご覧ください。

 

ホームステイ2日目

 

朝食を終えた2人は収穫したナスの出荷作業を行うために、菅沼さんが農業研修でお世話になった千野さんのお宅へトラックで向かいます。
ちなみに千野さんは今回の就農体験ホームステイの2回目でもお世話になる方で、甲府の新規就農者の育成に尽力されている農家さんでもあります。

 

移住者である菅沼さんは住まいと畑と作業場を別々の場所に持ち、地域の方との「貸し借り」の中でご自身の農業を発展させています。
初めから全てを用意して始めるのではなく、地域との繋がりの中で自分のスペースを少しずつ増やしている菅沼さん。

 

彼の「やり方」もまた新天地で農業を始める就農移住者の一つの「答え」だと思います。

 

 

触った感覚と重さで手際よくナスを仕分ける菅沼さんの職人技に市川さんが食い入ります。

 

 

菅沼さんから農協に出荷するナスの箱詰め方法を教わる市川さんは、菅沼さんが仕分けたナスを一つ一つ丁寧に拭いて段ボールに詰めていきます。

 

この一連の作業が今後の自分の収入に繋がると考えて真剣に作業する市川さんの姿。

 

 

「コーヒー淹れたから飲んでね。」と千野さんのお母さんが、軽食とコーヒーを持ってきてくれました。

 

お母さんは「最初から変わったことはしないで、農協に納めるとこから始めた方がいい。」と新規就農の考えを市川さんに伝えます。
「市川さんも甲府で農業を始めたらとっても嬉しい。菅沼くんなんて私の息子みたいなもんよ。」と笑顔で話すお母さん。

 

ちなみに菅沼さんの周りには菅沼さんを「自分の息子だ!」という人が沢山いるそうで、それは菅沼さんが地域と繋がっている証だと感じました。

 

 

箱詰め作業も程々になったところで、お母さんの誘いもあって2人は一旦休憩をすることにします。
菅沼さんが試験的に作った小麦を使ってお母さんが作ったパンケーキ(通称「薄焼き」)と甲府で獲れたブドウを頂きます。

 

この薄焼き、心地よい小麦の匂いにほんのり甘みがあり、本当に美味しい。
甲府で獲れたブドウも甘く、地域でしか食べることのできない食べ物に舌鼓を打ちます。

 

「こんなの大したことないよ。」と笑うお母さん。
いえいえ、とても良いモノを頂きました。

 

 

ふと見れば、作業場にすっかり馴染んだ市川さんの姿が。
雑談を交えながら菅沼さんに今後の作業内容を確認しています。

 

 

休憩を済ませると、先ほど詰めたナスを農協に納めるため、段ボールをトラックに積み込みます。
作業場の高さが丁度トラックの荷台の高さと同じになっており、2人はスムーズにナスを荷台に積んでいきます。

 

 

農協に行って収穫したナスを納めたのですが、皆さんのあまりの手際の良さにカメラを向ける前に荷下ろしが終わってしまいました・・・

 

 

農協への納品を終え、少し時間が余ったということで、新たな出荷用段ボールの組み立て作業を始めます。

 

 

農業には日々毎日何らかの作業があり、農家さんは自分のペースでスケジュールを組んでバランスよく仕事をしている。
休みがあって、休みがない。自分らしい生き方を作れるのが農業だと思う。

 

菅沼さんの男らしく、とても素敵な青年。
若くして自分の道をしっかりと定め、迷いなく突き進んでいる強さがあります。

 

彼の存在が市川さんを大きく刺激しています。

 

 

収穫しても規格外だったナスは持ち帰って自分たちの食料にします。
「規格外の方が美味しい野菜もある。」と話す菅沼さんは、この野菜たちを使って「SNSで物々交換」という面白い試みを行っています。

 

「例えば、沼津の漁師さんにナスを送ると、甲府に新鮮な魚が届くんです。人生、お金が全てではないですよ。」と話す菅沼さん。
「最近の戦利品は何ですか?」と尋ねると、少し悩んで「冷蔵庫ですね。」と答えました。

 

農業にはナスが冷蔵庫に変わる錬金術があるらしいです。

 

 

2人が千野さん宅で作業している間、奥さんは昼食の支度をしていました。

 

ホームステイも後半になると、それぞれが気を使うことなく、お互いの役割を自然と見つけて全うしていきます。
何となくみんなが繋がり家族になっている気がしています。

 

 

昼食の後は菅沼さんが自室で他のことをするということで1時間ほどの休憩になります。
そこで、市川さん家族は近所を散歩することに。

 

 

お父さんの背中は幼い少年にどう見えているのでしょうか。
移住を考えていた家族が、ホームステイをきっかけに甲府の就農を考えています。

 

 

休憩も終わり、今回のホームステイで行う作業も最後に。

 

初めて会った時の緊張が嘘のようにリラックスして話す市川さん。
距離が縮まった2人を見ると、市川さんに甲府の繋がりができた瞬間を感じました。

 

 

最後の作業は、昨日行った除草作業の続きです。

 

農家の仕事は収穫だけではありません。
こうした地道な作業が大きな実りを作るのに大切なのだと思います。

 

 

こうして第一回の就農体験ホームステイは終了しました。

 

後日、市川さんとお会いして話を聞くと、近日に菅沼さんのお手伝いに行くことが決まっているとのこと。
また、奥さんと話して、お子さんの進学する2年以内には甲府に移住する方向で気持ちが固まっていると言います。

 

甲府市としても引き続き空き家のご紹介や就農の制度のご紹介など、できる限りのバックアップをさせて頂きたいと思っております。

 

市川さんがこれから地域とどう繋がり、広がっていくのかはわかりません。
ただ、今回のホームステイがきっかけで、甲府への移住、就農への道が開かれていくことを願うばかりです。

 

次回は就農体験ホームステイ第二回「単身で良地を探す。①」をお送りいたします。